読書:3分でわかるホーキング

3分でわかるホーキング

3分でわかるホーキング

タイトルで軽い本なのかと思っていたが、思ったよりしっかりした本だった。

「本書の読み方」に書いてあるが、「3分」というのは1ページが3分という意味だそう。各章20ページ*1で全3章。1章1時間、計3時間が目安だろうか。

で、どうだったかというと。 えっと、たぶん倍近くかかった、気がする。ノート取りながら読んだので計測として正確ではないけれど。ただ、ノート無しでは二度三度読み返していた可能性もあるので、どちらが速かったかは分からない。

読んだのは主に2章(「理論」)と3章(「影響」)の部分。1章(「人生」)はさらっと読んだだけ。こうやって歴史部分と理論を切り離して読めるのは、この本のいいところだと思う*2

相対性理論がよくわかってない人間が読んで大丈夫かと心配したけれど、そこは一般向け。おそらくは難しい数学・物理学の計算があるであろうところが文章だけで説明されている。1トピック3分で完結するよう書かれているので、だらだら長いこともない。各ページには関連項目の指示もあり、章末には用語集。わかりにくかった時に飛ぶべきページがはっきりしていた。それに各章を全検索する必要があっても、そもそも20ページしかない。

特異点」「インフレーション」「量子重力理論」など、おそらく人生で初めて聞いた言葉だと思う。この本を読んだ後は、それらが分からなくもないような気持ちになった。「分かった」とは、ちゃんと自分で数式を使って計算や証明ができるレベルだと考えている*3。「分からなくもないような気持ち」というのは、文章を引っかからずに読めて、その内容に納得できた、くらいの意味だ。でも、全くの「分からない」初心者が、事前知識なしで読んで挫折せず、「読んだ後に『分からない』が無い(と感じた)」と感想に書けるのは、それだけかみ砕いて書いてあるということなんだろうと考えている。

そういえば、本のレビューに「分かりやすい!」「分かりやすいと思います」と書いてあることは多いけど、「分かりました」と書いてるものは見かけない。少なくとも今思い出せない。レビューを書いた人に理解度の自信のほどを☆5段階で聞いたらどういう統計になるだろうか。脱線。

個人的な(=人によって差のある)感想として、見開き右ページの挿絵(イラストは少なく主に写真コラージュ)がそんなに的を外していないのが好印象だった。ヘンテコな図解や大げさイメージに当たると*4、かえって理解の妨げになることがある。この本の挿絵は直接本文を説明することはない。ただ、本文に「重力」と単語があれば点線の上に並んだ林檎(落下のイメージ)を、「時間」とあれば時計を、「質量」なら天秤に載ったブラックホール…と、左ページの文章から連想できる絵が使われている。かつ、全体的に綺麗め。文を読んだ後に絵を見て「そういうことか、なるほど」と納得することもあるし、「綺麗だなー」と脳の休憩になることもある。図説ではないのに、文と絵がちゃんと一致している。変に印象操作してこない。適切な絵の使い方ってこうだよな、と感心してしまった。イメージ以外に、博士や関係者の写真も多くある。

分からなくもない気持ち、とは書いたけれど、これを書きながら本をパラパラめくったところ、頭から抜けてる部分も結構あった(個人の資質の問題)。「エントロピー」や「情報」の意味合いも自分の中でもやっとしている。それは次の読書や調べもので補完していこうかと。 近年のほう(原著は2012年出版)は、魔法のような概念と呪文のような用語*5がたくさん出てくる。概要だけ載っているので、これらもあとでWikipediaで調べておこう、という感じ。 読んだ後に宿題がはっきりしているのは良いなと。

しかし、4次元だとか、時間の扱いだとか、「太陽の30倍」「(大きさは)天王星の軌道くらい『しかない』」などの天文学的数字(天文学なんだから当然)がさらっとでてくる文章を読んでいると、自分の寿命や近所数km程度の範囲でしか物事を考えていない自分が小さいなあ、と思えるのでした。

*1:見開きの左ページが本文、右ページが挿絵という構成なので、実際には40ページ

*2:読み物として書かれている本は、「○○年に△△(人物は)は□□した。これは~で…」など、歴史背景と理論を交互に説明する形のことがある。流れを追うには読みやすいが、つまみ読みや要約がしにくい

*3:科学でうかつに「分かった」と言っちゃいけない

*4:最近読んだ記事に多かったので偏見かもしれない

*5:新しい学説に、概念や訳語が追い付いていないだけだとは思う。