2020オリンピック開会式で使われたゲーム音楽の原曲探し

2020年オリンピックの選手入場時にドラクエなどのゲーム音楽が使用された。ただし、テレビだと個別の製品名を紹介できない(宣伝になってしまうから)ようなので、それぞれの出典をわかる範囲で残しておきたいと思う。

ゲーム音楽の特徴として

  • 同じ曲でも複数のアレンジがある(続編で同じ曲が使われる、テーマ曲のメロディがタイトル画面、エンディングで使われる)
  • 同様に、同じ曲でもアレンジ違いで曲名が変更されることがある(副題がつく、オーケストラ用に再編成される、など)
  • ゲームの移植、リメイクのときに音楽が再アレンジされる場合があり、1つのゲームに複数のサウンドトラックが発売されていることがある。
  • オーケストラアレンジが海外でしか発表されていない場合もある(国内CDが無い、そもそも録音されてない)

という点があり、「どれが原曲」と1つに絞るのが非常に難しくなっている。ここでは代表的な1つのCDに絞って紹介し、原典についてわかる範囲で補足を書いている。

ドラゴンクエスト

「序章:ロトのテーマ」:作曲 すぎやまこういち

「序曲」「序曲のマーチ」等の名前でほぼ毎作品登場する曲。「ロトのテーマ」の曲名になっているのはDQ3。「序章:ロトのテーマ」のタイトルで収録されているのはリンク先のCD。

ファイナルファンタジー

「勝利のファンファーレ」「MAIN THEME」:作曲 植松伸夫

「MAIN THEME」は「メインテーマ」とカナ表記されることが多い。

モンスターハンター

「英雄の証」「旅立ちの風」:カプコンサウンドチーム

テイルズオブシリーズ

「スレイのテーマ~導師~」:作曲 桜庭統

「王都-威風堂々」:株式会社ナムコ・テイルズスタジオ*1

それぞれオーケストラアレンジ版が存在し、別のCDに収録されている。

キングダムハーツ

Olympus Coliseum」「Hero’s Fanfare」:作曲 下村陽子

Olympus Coliseum」はシリーズ毎回登場する曲で、1作目から登場している。 オリンピックのセットリストの曲名は「Olympus Coliseum -The Shining Sun-」とあるが、CDでは「Olympus Coliseum (-The Shining Summit-)」となっている。前者のほうのタイトルはCDには収録されていないので、誤植か、オーケストラアレンジの際のタイトル変更なのかもしれない。

クロノ・トリガー

「カエルのテーマ」「ロボのテーマ」:作曲 光田康典

初出はSFCプレイステーション版、DS版のリメイクで別のCDが発売されている。

カエルのテーマはもともと前奏が無かったが、プレイステーションのリメイク版以降追加された。その後は前奏付きのバージョンが使用されることが多い。

エースコンバット

「First Flight」:作曲 小林啓樹

ソニック・ザ・ヘッジホッグ

「Star Light Zone」:作曲 中村正人

ファンタシースターユニバース

「Guardians」

※CDはエビテン専売

グラディウス(Nemesis)

「01 ACT 1-1」:作曲 古川もとあき

曲の内容はグラディウスⅡ「Title Demo」「Epuipment」のアレンジ。原曲は「グラディウス」アーケードサウンドトラックに収録されている。

NieR

「イニシエノウタ」:作曲 岡部啓一

シリーズで共通して使用される曲。「ニーア・オートマタ」でも登場する。複数のアレンジがあるが、ツインボーカル版は「イニシエノウタ/運命」のバージョンが近い。

サガシリーズ

「魔界吟遊詩-サガシリーズメドレー2016」:作曲 植松伸夫/笹井隆司/伊藤賢治/浜渦正志

*ロマンシング サ・ガ ミンストレルソング「オープニングタイトル」 :作曲 伊藤賢治 ** ロマンシング サガ -ミンストレルソング- オリジナル・サウンドトラック

ウイニングイレブンPro Evolution Soccer

「eFootball walk-on theme」

  • ウィニング・イレブン、およびシリーズのサウンドトラックは存在するが、このタイトルそのものずばりの曲が見当たらず。
  • ウイイレ2020と2021は「efootball」と改名している。Tokyo 2020と関連させるなら、この2作品が出典の可能性が高いが…。
  • 「efootball 2021」のアプリ版をDLして確認したが、メニュー画面やチュートリアルの曲とは違っていた。
  • (2021/8/3追記)公式Twitterにて曲がYouTubeにアップロードされた。https://www.youtube.com/watch?v=Cf971ykdLWE

ソウルキャリバー

「The Brave New Stage of History」:作曲 中鶴 潤一

余談

ここから先は怪文書

開会式で任天堂の曲が使われなかったことについて、色々推測を書いておく。

任天堂の曲が使われなかったことについて、残念には残念なのだけれど、多少考えられることもあると思った。なので好き勝手な推測を書いておこうと思う。

一般に言われている理由としては

  • 曲の提供をしたのがJeSUという団体。任天堂JeSUに加盟していなかったので選曲から漏れた

というものがある。

また、曲リストに対して、個人的な印象としては下記になる。

  • 毎回サウンドトラックが発売されていて、売り上げ実績があるシリーズが選ばれてる。
  • オーケストラの公演が行われていて、そのCD化がされているものが多い(音源が無ければ選考ができないだろうし) ** マリオ単独のオーケストラコンサートは行われているが、国内でCD化されていない。
  • 東京フィルハーモニー演奏の曲が多い(ドラクエ以外)
  • 海外で人気があるタイトル(ソニックソウルキャリバー)の採用
  • 現在Spotifyとかで配信されていて、入手可能な曲が多い(コナミ2曲除く)
  • RPGではバトル曲が大体人気だが、1曲も無かった。開会式に合わないからか

CDの売り上げ枚数については調べていない(ランキング圏外なので見つからないことが大半)ので、発売されている種類(アレンジ等)や再販の有無などを基準にしている。

JeSU加盟会社から選ばれた」件については、事務処理上の手間を考えると、そういう選択もあるかと思う。

JASRACのデータベースを見るとわかるが、ドラクエ以外のゲーム音楽JASRAC管轄外になっているものが多い。「イニシエノウタ」は個別ページの「管理状況」がすべて「×」になっている。テイルズはナムコソニックセガが管理している。

これらに対しては、通常、権利を持っている会社にそれぞれ連絡して、何らかの申請をして曲を使う。JASRACと違って申請方法が各社バラバラで、事務処理が煩雑らしい。実際のところ、メーカー混合のオーケストラやライブ演奏は開催数が少ない。あっても、大手の団体であったり、クリエイターさんが自ら主導した等、マネジメントがしっかりしてそうな場合だ。

曲を採用するにあたって、「窓口が違う」というのは、障壁の一つになったかもしれない。オリンピック側からしても、複雑な手続きをせず、窓口1か所で済むようにしたのかもしれないな、という風に思っている。

あとは、やはり「開会式に会う曲」が重視されたのではないかと思う。RPGなら人気のバトル曲(人気のゲーム曲ランキングはWebを探してほしい)が1つも採用されていないので、単純に人気順だけで選ばれてはいない*3。「ドラクエで始まりドラクエで終わる」という構成の意図で、選曲が決まった可能性もある。また、マリオの地上面(最初の面)の曲は、行進曲として歩きずらいリズムだという指摘もある。ちゃんと候補に挙がっていたけど、結果としてはずれた、だけなのかもしれない。

ゲーム曲は1作品に対して多いと100曲を超えることもあり、「名曲」と呼ばれている曲でも膨大な数になる。その中からこの10数曲に絞り込むのは相当大変な作業と想像できる。不評より好評が多かったのは、人気だけでなく「オリンピックの開会式」という目的に沿ったBGM選曲になっていたからなのだと思う。そこは評価しているし、正直「ありがとう」と、書いて残したいと思う。

おしまい。

*1:JASRACデータベースの表記による。ゲームスタッフロールで作曲者は「桜庭統、青山響」と記載されている

*2:ドイツ語

*3:サガは戦闘曲が人気、グラディウスも2より1が有名、等