ロボットとR.U.R.
R.U.R
青空文庫で少し読んでみた。
- 最初の研究者、ロッサム老人は完全な人間を作ろうとしたが、10年かけた試作品は3日で死んでしまった。
- 研究に甥が参加する。甥は技術者で、「自然より早く作れないんじゃ店じまいしたほうがいい」と老人を批判する。
- 甥は人体を詳しく調べ、「人間は複雑だ、もっと簡単に作ろう」と考える。
- 人間はピアノを弾いたり散歩したり、生産とは不必要な行動をしてしまう。そういったものを省き、簡略化することで、人間よりコストパフォーマンスの良い労働者を製造することが考えられた。
- 結果、経費が最低限に抑えられる労働者が開発される。「ロボット」という商品労働者の始まり。
- ロボットはコスト削減のために労働力向上に役立たないものはすべて省略された。機械としては人間より完璧であり、高度な知性を持つが、心を持たない。
- 労働者を作ることは、ガソリンエンジンを作るのと同じ。製造が簡単で、機能は実用的に最高でなければいけない。
ドミン ロボットの内部が、いったいどうなっているかご覧になったことは?
ヘレナ いいえ。
ドミン 整然として、簡単なものです。ある意味、芸術作品ですよ。その中にあるものは少ないが、すべて完璧な秩序の上に成り立っている。技術者の作り出したものの方が、自然の作り出したものよりも、技術的に言って完成度が高いのです。
最近のニュースへのモヤモヤの回答をここで読んでしまった気がした。
作中、ロッサム老人の行為については「神の真似事」と道徳の観点で批判がされている。一方、甥は「効率よく作れないんじゃ意味がない」と、生産性の観点で老人と対立する。この甥の考え方は、現在のコンピュータの進歩理由にもそのまま使える、っていうかそのままだ。作業効率化のために技術が発展する。人間がやるより遅ければ意味がない。効率よく効率よいものを作る。
「ロボットが心を持つか」は議論のテーマとしてはありだけれど、産業とは一定距離のまま近づかないんじゃないかな、ということを考えたりした。
R.U.Rの発表は1920年。
100年前の作品のほうが、最近の未来予測より現実的に見える不思議。